2014年8月30日
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2014年広島豪雨災害時の斜面崩壊・土石流について
(速報その3:崩壊の発生密度と地質条件・降雨条件)

GISデータ(測地系は全てWGS1984)

崩壊・土石流範囲.kmz
崩壊・土石流ポリゴン.shp
崩壊源位置情報.csv

これらは2014/8/30時点までに京都大学防災研究所地盤災害研究部門 山地災害環境研究分野が解析したデータを,公益性を考え,必要とされる方のために速報的に公開するものです.このデータの使用にあたっては,ご自由に図化したり,加工したりして頂いて差し支えありません.ただし,提供者はデータの精度・確度を保証するものではありません.データ使用の帰結に関する責任は使用者にあり,それによって生じる問題について,提供者は一切の責任を負いません.

図3は,崩壊の分布を地質図上にプロットしたものである.地質分布は,20万分の1シームレス地質図(および5万分の1地質図)を参照しているが,一部で地質境界の位置にずれがあると推察されたため,国土地理院の公開している基盤地図情報の5mメッシュの高解像度DTMにみられる地形特性を参考に,より確からしいと思われる境界線を加えて描画したものである.当地域には花崗岩のほか,熱変成を受けた堆積岩(ホルンフェルス),および流紋岩類が分布している.
今回の表層崩壊は花崗岩域を主として発生したものであるが,ホルンフェルス地帯においても崩壊および土石流が群発していることがわかった.ただし,崩壊発生密度は花崗岩地帯のほうがホルンフェルス地帯よりも大きい.流紋岩地帯では,大強度降雨の中心域の範囲外のため判然としないが,崩壊密度は小さいようであった.これらの解析結果は,降雨の他に地質条件も崩壊の発生密度や発生/非発生の支配要因となったことを示している.

今後,現地踏査によって,正確な地質境界を引き,各地質帯でどのような力学的・水理学的物性を持った土層および基盤岩が,斜面を構成していたのかを詳細に調査する必要がある.
図1.2014年広島豪雨災害における降水分布と崩壊源の分布(左)および崩壊密度の分布(右)
京都大学防災研究所 地盤災害研究部門
 松四雄騎・鄒 青穎・千木良雅弘
図2に表層崩壊および土石流によって土砂移動が発生した範囲を示す.崩壊の一部は山頂付近の斜面で発生し,長いもので1 km程度を流れ下って山麓に達している.
発災当日に朝日新聞社ヘリコプターに搭乗して空撮した写真,国土地理院の公表した空中写真資料,および企業等の公開した写真情報をもとに崩壊分布図を作成した. 図1は崩壊の分布および崩壊源の点群密度,降雨の分布を10 mメッシュのデジタル地形モデル(DTM)上にプロットしたものである.崩壊は140か所に及び,約3x12kmの狭い範囲に分布している.崩壊の発生密度は1km2あたり最大30か所に達する.崩壊が高密度で発生した領域は >150 mm/3hの降雨の分布域と調和的であり,被災範囲の拡がりが,一定以上の降雨強度の拡がりに規定されていることがわかる.

過去の速報へのリンクはこちら
2014年広島豪雨災害時の斜面崩壊・土石流について(速報その1: 発災状況)
2014年広島豪雨災害時の斜面崩壊・土石流について(速報その2: 降雨と崩壊の分布)

崩壊源・土石流分布図の作成は京都大学防災研究所 地盤災害研究部門 山地災害環境研究分野の大学院生 渡壁卓磨氏・平田康人氏の協力による.

図3. 表層崩壊源の分布と地質分布

図2.2014年広島豪雨災害における表層崩壊および土石流による土砂移動発生域