2008年6月17日
四川地震による斜面移動
―Google earthをもとにして―
京都大学防災研究所
千木良雅弘
Google earthに公開された衛星画像(主にFORMOSAT2)を観察し、またJAXAから公開されたALOS画像をもとに、大規模な地すべりと、崩壊密集地、いくつかの古い地すべり地形を抽出し、それらの地震発生前の地形的特徴と地震発生後の状況について整理した。次の地図の位置番号は、次ページ以降の番号に対応している。
・ 崩壊は2つの帯状地域に集中して発生したようだ。これは地質構造に起因している可能性が高く、竜門山断層の上盤にあたる。ALOS画像(6月5日公開)によれば、この崩壊密度の差は極めて明瞭である。
・ 河道閉塞を起こした地すべりの中には、その決壊の危険性だけでなく、さらなる地すべりが懸念される箇所もある(下地図の3,4)。
以下に、地図上に付した番号に応じて画像観察結果などをとりまとめる。
地すべり
1 唐家地すべり下流(FORMOSAT, 5月15日撮影) 小規模地すべりダム。堤体体積が小さいので、容易に決壊しそうである。
2 北川 町を呑み込んだ地すべり(FORMOSAT, 5月15日撮影 左Multispectral,右Panchromatic)
北川 曲山鎮 (上の写真位置の対岸) 左から FORMOSAT 2
Panchromatic (5月15日)、同Multispectral、ALOS PRISM (2007年3月31日、2008年5月18日) ALOSの方が明瞭に見える。
3 唐家地すべりの下流左岸の地すべり。河道閉塞。右写真の矢印を連ねた連続的な亀裂があり、今後崩壊する可能性が高い) 。FORMOSAT2 (左:Multispectral、5月15日。右:Panchromatic 、5月15日)。下2枚:SPOT画像(2008年撮影)。地震前にわずかに膨出して、馬蹄形の凹地に囲まれた斜面(矢印)が崩壊した。
4 唐家地すべり (FORMOSAT, 5月15日撮影、MultispectralとPanchromatic)斜面上方の亀裂に注意。河道閉塞。高さ1200m、幅803m、体積2037万立方メートル
亀裂に注意
地震後のFORMOSAT2の鳥瞰画像(上、5月15日撮影)と地震前の鳥瞰画像(SPOT、下2008年撮影)地震前に斜面上方に凸を向け、尾根を横断する複数の馬蹄形凹地が認められる。
5 (北川南西) (FORMOSAT2, 5月15日撮影)河道閉塞
6(北川西方)(FORMOSAT2, 5月15日撮影)せき止めダムはない。
7 安昌西 FORMOSAT2 5月15日撮影 下流に大きな集落はない
8 高川S (5月14日撮影FORMOSAT2)せきとめダムなし
パンクロなし。
8.5 高山西方の巨大崩壊 (上2枚と左下1枚はSPOT 2008年撮影、右下ALOS PRISM/AVNIR6月9日撮影JAXAホームページから)。FORMOSAT画像では雲のため見えない。最上部に線状の凹地がある。下部は特に切断された地形ではない。(やや急傾斜な程度)
9映秀 左 5月16日FORMOSAT2 右2008年SPOT あまり明瞭ではないが、河道閉塞が起こっているもよう。
10映秀西 地震前に小滑落崖があり、その部分を含んで移動範囲が拡大した。矢印の部分では川が東に凸に曲がっており、ここは西からの古い地すべりの末端と思われる。左右ともにSPOT画像
古い地すべり地形
O−1 (FORMOSAT2、パンクロは5月16日、カラーは5月15日) 眠江 茂具北西 飛虹北方 この南方には非常に高い位置に段丘が分布。このあたりは右岸側に地すべりが並んでいる。」
O-1の南東 小規模滑落崖があるが、地震前後で川幅に違いがないので、動かなかったことがわかる。
o-2 黒虎東(古い地すべり、脚部は切断) FORMOSAT 5月16日
O−3 文川西方 左SPOT 5月撮影 右2008年SPOT撮影 もともとすべりそうな地すべりだったが、ほとんど動かなかった。――たぶん脚部切断されていなかったため。斜面上方に馬蹄形の亀裂(斜面下部が崩壊)
O-4 SPOT 2008 文川南 地震後の映像はなし。雲のため。
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表層崩壊
S-1(左) S-2(右) 文川と茂具との中間 (左Shigu, 右Wen-chen-chuan)足の長い崩壊によって道路の寸断が著しい。特に西向き斜面の崩壊が多い。
S-3 文川 5月16日FORMOSAT2それほどひどくない
S-4映秀西()