DPRI Mountain Field trip log #001
環境地球科学IIIA巡検

花崗岩と花崗閃緑岩の風化と崩壊

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花崗岩のコアストーンを見つつ,岩盤分類について解説を受けているところ.

野外で実物を見ながらの講義が一番良くわかります.

調査日: 8 Jun. 2010

行き先: 愛知県豊田市小原

参加者: 教員3名,研究員1名,学生6名 (引率・指導: 千木良先生)

行程: [出発: 7:30] ― [現地着: 10:30] ― [現地発: 17:30] ― [帰着: 20:00]

では,そろそろ帰りましょう.
「そこ,滑らないよう気をつけて.」

それにしても,フィールドで実物を見ながらディスカッションするのが一番だと,再認識しました.

ではまた,次回をお楽しみに.



引用文献:
Chigira, M., (2001) Micro-sheeting of granite and its relationship with landsliding after the heavy rainstorm in June 1999, Hiroshima Prefecture, Japan. Engineering Geology 59, 219-231.
恩田裕一 (1989) 土層の水貯留機能の水文特性および崩壊発生に及ぼす影響.地形 10,13-26.
Onda, Y. (1992) Influence of water storage capacity in the regolith zone on hydrological characteristics, slope processes, and slope form. Z. Geomorph. N.F. 36, 165-178..
戸邉勇人・千木良雅弘・土志田正二 (2007) 愛知県小原村の風化花崗岩類における崩壊発生密度の岩相間での比較.応用地質 48,66-79.

今回の巡検の主目的は,花崗岩類の岩石学的分類を学び,花崗岩と花崗閃緑岩の風化様式およびそれが地形や地形プロセスにあたえる影響を理解することです.
行き先の愛知県小原では,1972年に西三河豪雨災害とよばれる表層崩壊による土砂災害が発生しました.このとき,花崗岩と花崗閃緑岩がそれぞれ分布する隣接地域では,表層崩壊の発生密度に大変明瞭な差異が現れました.同じ降雨条件にも関わらず,花崗岩地域では花崗閃緑岩地域の20倍もの崩壊が起きたのです(戸邉ほか,2007).これは一体,どのうような理由によるのでしょうか?
水文地形学に大きな進展をもたらしたこの地で,「岩質―風化様式―水の振る舞い―崩壊」のリンケージを学びます.

厚い風化帯をつくる花崗閃緑岩.風化して柔らかくなってもオリジナルな組織(構造)は残っている(in-situ weathering).

風化帯があると水の貯留容量が大きくなり,崩れを起こしにくくなる.これは侵食が起こりにくい(つまり,風化生成物が取り去られにくい)ことを意味し,ますます厚い風化帯が発達する,というフィードバックが考えられています.一方で花崗岩は,薄い土層が容易に飽和するため,崩れに至りやすいと考えられています(恩田,1989; Onda, 1992).
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文責: 松四雄騎 (9 Jun. 2010)
(C) 2010 DPRI Mountain. All Rights Reserved.
丘頂部の全体はこんな風景.遠目にもマイクロシーティングがあることがわかる.割れ目に沿って岩片が剥離し続けるため,ハゲ山がなかなか回復しないのではないだろうか.
↑野外でのレクチャーは印象に残る.里山の美しい風景をバックに.黒板ツール「おえかきがっこう」も大活躍だ.
↑花崗岩がどんな風化様式を持つかは,岩質,すなわち各々の岩体が持って生まれた個性による.

写真はマイクロシーティングのみられる花崗岩でしばしば観察される球状の孤立石英粒子(破線円内).
これは鉱物結晶の粒状組織が造られた後,この岩石が再度,融解を経験してきた証拠でもある.
一口に花崗岩といっても,みな同じ花崗岩というわけではないのだ.
少し歩くと花崗閃緑岩のコアストーンを発見.花崗岩とどこが違うか?風化を受けやすい斜長石がより多く,角閃石(hornblende)が入っている.写真は風化殻を割りとって観察しているところ.
最後は,花崗岩からなるある丘の頂部にみられるマイクロシーティングの観察.左の写真は典型的な露頭を撮影したもの(スケールの長さは50 cm)で,右の写真はその一部を拡大したもの.斜面の傾斜方向と低角に交差する方向(ここは山頂付近なのでほぼ水平方向)に,無数の開口割れ目が入っていることがわかる.割れ目の間隔は5-10 mmくらいだろうか.削剥に伴う除荷によって発生すると考えられている.マイクロシーティングは,コアストーンと対極をなす花崗岩類の風化様式のひとつ.表層崩壊発生の素因となることが指摘されている(Chigira, 2001).


径が5-6 mはあろうかという,花崗岩のコアストーンがごろごろ集積している.こういうサイズのコアストーンが存在するには,ジョイントの間隔がキーとなる.つまり,割れ目が多いと大きな塊が残らないのだ.
お昼ごはん!
まずは風化花崗岩の露頭.花崗岩を造る鉱物について,図表で解説を受けたあと,露頭に張り付いてみる.石英(quartz),斜長石(plagioclase),カリ長石(K-feldspar),黒雲母(botite)をそれぞれ見分けられるか?